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研究報告

第40回日本熱帯医学会

大腸菌O157の定着・感染に対するIgG含有乳清タンパクの予防効果

船戸川圭次, 小笠原美果, 弥益博美, 切替富美子, 肝付兼次郎, 切替照雄

目的

熱帯地域における腸管出血性大腸菌感染症の報告が相次いでいる。今後この疾患が熱帯地域で主要な腸管感染症の一つになることが予想されており、これらの地域に適した感染予防法の開発が急務である。本研究では、大腸菌O157の定着・感染予防にIgGミルクの投与が有効かどうかをマウスを用いて検討した。

方法

ストレプトマイシン(SM)耐性プラスミド大腸菌O157(O157-SMR)は、国立感染症研究所荒川宣親博士より供給された。IgGミルク凍結乾燥品を5%溶液としたものを使用した。4週齢Balb/cマウスにO157‐SMR(1×105CFU/ mouse)を経口感染させ、感染後1時間後よりIgGミルクを投与した。投与方法はIgGミルクを吸水瓶に入れ自立哺乳させた。感染後マウスは3週間体重・症状を観察し、経時的に糞便中のO157‐SMR生菌数を測定した。

結果と考察

無処置マウスにO157-SMRを感染後24時間で糞便中の生菌数はすでに検出できなかった。そこで、マウスの腸管常在菌を減少させる目的で、感染前3日間SM(5g/l)を含むIgGミルク、スキムミルクまたは水を与え、感染後はSMを含まないものを与えた。スキムミルクまたは水を与えたマウスは、24時間後で糞便中のO157-SMRが109g以上に増加しその後3週間108/gの生菌が検出された。また、これらの群のマウスの50%が感染後2-11日後で死亡した。一方、IgGミルクを投与した群では、感染後24時間後の糞便中では108/gの菌が検出できたが、その後急激に3週目では104/g であった。また、すべてのマウスが生存した。以上の結果、IgGミルクの投与が大腸菌O157の定着・感染を予防することが強く示唆された。