ホーム > 学術論文 > 乳清活性タンパク質 (Concentrated-Bovine Protein; CBP) の骨密度に対する上昇効果の検証
学術論文

日本統合医療学会誌 2009; 2(2): 114-117

乳清活性タンパク質 (Concentrated-Bovine Protein; CBP) の骨密度に対する上昇効果の検証

内藤健太郎, 松多邦雄

はじめに

日本は人口の急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の発症率が年々増加しつつある。骨粗鬆症は骨の虚弱性が増し、骨折の危険性が増加する疾患として位置付けられ、一般的には骨密度の減少として定義されている。骨粗鬆症に対する適切な対策は、早期の成人期における骨量ピークを最大化させることであり、閉経後の女性にとっては急速な骨減少を防ぐことである。骨形成と骨吸収を繰り返す骨のターンオーバー過程は骨リモデリングと呼ばれ、長い年月をかけて進行する。したがって、エネルギーや各栄養素がバランスよく摂取できたうえで、骨の生理学的に有効な機能性栄養素を摂取することは骨の健康管理に役立つものと思われる。

歴史的に、牛のミルクは優良な栄養価値を持つことから幅広く消費され、カルシウムの優れた源として広く認知されている。一方で、ミルクに含まれているホエイタンパク質が骨リモデリングに機能的に働くことがいくつかの報告により示唆されている。特に、牛のミルク由来のホエイタンパクは塩基性画分において骨生理学的に有用であることが証明されており、その主とする作用機序は破骨細胞の媒介する骨の吸収の阻害を通したものと考えられている。また、同塩基性タンパク質は健常な高齢女性や健常な男性を対象とした臨床試験において、毎日摂取することで骨密度に有意義な増加をもたらすことから、骨の機能性栄養素として注目されている。

最近になって、ホエイタンパク質の低分子画分(1-30 kDa)において骨形成の促進を担う活性成分が新たに乳清活性タンパク質(Concentrated-Bovine Protein; CBP)画分として特定された。同報告において、卵巣摘出された若齢ラットのCBP摂取群において、対照群に比べ有意に大腿の骨密度を増加させたことが示している。非常に興味深い点として、検証においてCBPは動物のサイズおよび骨の縦方向の伸長が確認され、潜在的に成長を促進する活性を有する可能性が考えられている。一方で、人での臨床試験データが乏しいため、CBPが骨の代謝に関連した栄養素であることをヒト臨床試験による検証により進める必要があった。